« 20's time 道重さゆみDVD。 | トップページ | 道重さゆみの「踊る!さんま御殿」出演に寄せて。 »

2009年7月25日 (土)

「コントロール」や道重さゆみのことなど。

コントロール コレクターズBOX (初回限定生産) [DVD]

一昨年ぐらいに制作された「コントロール」という映画を観た。これは1970年代後半から1980年にかけて活動したイギリスはマンチェスターのポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ・バンド、ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカル、イアン・カーティスを題材にしており、未亡人であるデボラ・カーティスの著作に基づいている。

ジョイ・ディヴィジョンというバンドがその後のオルタネイティヴ音楽界に与えた影響は計りしれず、たった2枚のオリジナル・アルバムである「アンノウン・プレジャーズ」「クローサー」は音楽批評家が選ぶ名盤リストなどにはほぼ必ずといっていいほど選ばれている。「アンノウン・プレジャーズ」発売30周年にあたる今年、イギリスの音楽週刊誌NMEは特集を組み、この雑誌が2003年に選んだ歴代シングル・ベスト100の第1位はこのバンドの「ラヴ・ウィル・ティア・アス・アパート」であった。

いまのようにインターネットで無料で音楽が試聴できたりCDショップに多数の試聴機が設置されたりしていなかったその昔、私はいまは無き六本木WAVEというCDショップで、「パンク以降最も重要なアルバム」というコメントPOPだけを頼りに「クローサー」のCDを買った。音楽性はとにかく暗い。とことん暗いのだが、それを突き詰めて突き抜けたかのようなポップさがある。白い壁のワンルームマンションで薄暗い間接照明だけにして、歌詞カードを読みながらヘッドフォンで集中して聴いた。絶望、孤独といったものを題材とした歌詞と陰鬱きわまりない歌唱にすっかり虜になった。

基になったデボラ・カーティスの本も原書で読んでいたし、映画の発表があった時には日本公開を楽しみにしていたのだが、すっかりタイミングを逃し、観る機会を逸していた。いろいろやることややらなくてはいけないことが多々ある日常において、1時間半とか2時間とかの時間をまとめて確保しなくてはならない映画を観るという行為は実に敷居が高いものになっている。昔は暇な時間も腐るほどあったし都心の方に住んでいたので、単館上映なんかもすぐに行けたし、とにかくレンタルビデオなんかも週に何本も借りていた。最近は本当にあまりにも観なくなってしまい、全く興味を無くしたのならばそれはそれでいいのだが、いつか観ておかなくてはという強迫観念的なものが日々増えていくのはやはりよくないと思い、数ヶ月前から週に1本は必ず何かを観るというノルマを課すことにした。こうでもしなければ本当に観ない。そうまでして楽しいのかといわれると、私の場合は案外楽しいのでこれはこれで良し。

イアン・カーティスは職業案内所みたいな所で昼間は働きながら、夜はバンド活動をしていたようだ。バンドが有名になる前にデボラと出会い、純粋な恋愛から結婚し、子供も生まれた。そして、バンドもメジャーになっていく。ここでバンドの成功と結婚生活という日常との溝が生まれ、それはどんどん深まっていく。これはまあよくありふれたストーリーだ。取材で知り合った若いフランス人女性ジャーナリストとの間にロマンスが育まれ、やがてそれは止めようのない臨界点に達する。ある夜、イアンは彼女に対して「結婚は失敗だった」と漏らす。そこから不倫関係が始まる。

ファンタジーとエロスこそが生命を生き生きとさせ、それは美の追求であり、とても純粋なことだ。しかし、それによって平穏な日常は脅かされ、不幸になる人も出てくる。一般的な小市民的な視点で見れば、何と身勝手で無責任なのだろうと思う。それは至極当然の感想。だがしかし、人は何の為に生きるのかという存在の根源的な問題を考える場合、必ずしもそうとは言えない。本当は全部が同時に満たせるといいのだが、現実問題としてなかなかそうはいかないことも多い。

日常としての生活にはファンタジーやエロスは存在しない。確かな安定した愛を育むということはそこよりも上のレベルであり、既婚者は互いの努力によりそれに従事すべきなのかもしれない。あるいは、その覚悟が出来てから結婚すべきなのかもしれない。だがしかし、やむをえずそうではない状況を選んでしまった場合に、もう後戻りは出来ない。さて、どうすべきか。

この映画におけるイアン・カーティスの二重生活における葛藤、この場面はあたかも精神的カサブタ剥がしともいうべき状態で鑑賞した。私自身にも身に覚えがない訳ではない。何とか家庭の方も立て直そうと努力してみるのだが、そうすると今度は情人の方が悲しい顔をし、自分自身も本当にいま愛しているのはそっちの方なので、とてもではないがそんな状況に耐えられるはずもなく、原因は全て自分にあるにもかかわらず、そもそも何の罪もない配偶者の存在を理不尽に責めたててみたり、そんな感情を持ってしまう自分自身に対して激しく自己嫌悪になってみたり。いや、本当にこれはツラい。イアン・カーティスの場合は持病の癇癪が発症という問題もあり、バンド活動を含め何もかもが楽しめず、生きることそのものが負担でしかなくなってしまう。

バンドにとって初のアメリカ・ツアーを前にして、イアン・カーティスは自宅にて首吊り自殺する。残されたメンバーは、その後、ニュー・オーダーを結成し、数々のヒットを生んだ。

ジョイ・ディヴィジョンをはじめ、当時の音楽がふんだんに使われ、全編モノクロのこの作品は、イアン・カーティスという1人の芸術家の葛藤をヴィヴィッドに描くことに成功している。エロスの終着点は死であり、ゆえにこの帰結も必然だったのかもしれない。

ファンタジーとエロスの誘惑というのは常に日常に潜み、それを心の奥底ででも求めていれば必ず捉えられてしまう。その強烈さは人生の他の事柄の全てを無価値にしてしまう程であり、抗うことは至難の業である。しかし、私は肉欲が精神的価値を上回ってしまうような事態を避けることに真剣である為、婚外においてこの可能性が生じた場合には早急に撤退することに決めている。また、相手方からそのような可能性が示唆された時点で、ファンタジーそのものが消滅するような回路を私自身の中で構築している。いや、しかしこの域に達するまでは幾つもの眠れぬ夜やら流した涙やら壁に頭を打ちつけたりとか修羅場ランバやらそういったことも多々あったのだが。

ところがである、モーニング娘。道重さゆみという当時まだ10代の芸能人のことをちょっと好きになり、それから急激にその魅力にハマっていった結果、ついにこの問題を全てクリアーしてしまった。私の精神世界におけるファンタジーやらエロスの領域の全てを、道重さゆみが支配してしまったのだ。道重さゆみ以外にこれを感じたり期待したりすることが本当に全く無くなってしまった。これが現実世界で関わりがある相手の場合だと、またややこしい領域に発展してしまう危険性もあるのだが、道重さゆみと私との間に具体的現実的な関係性が生じる可能性は一切無い為、これは安心である。家庭での関係を維持していくというのはファンタジーとかエロスとかとは全く別の種類の活動なので(道重さゆみ本人はこれを否定することは間違いないのだが。「そんなの切ない。イヤです絶対」とか言って)、これにはこれで余裕を持って従事することが出来るというわけ。いや、アイドルというのは素晴らしいな。逆にいうと、独身で恋人もいない状態でアイドルにドップリハマると、本当に恋人なんかいなくても充実した精神生活が送れるのだな、というふうにも思う。人が同性アイドルに感じるなんとなくの嫌悪感っていうのは、おそらく異性としての自分の存在価値が侵されるという恐怖が根源になっているのだろう。道重さゆみ関連のイベントや舞台に足を運ぶと、いわゆるヲタという人達を多数見かける。インターネットを見ても、全国ツアーを全部回ったりグッズや生写真をたくさん買って年間に何十万円も使っている人達も少なくないようだ。たとえば私が20代ぐらいで独身で雇われ人でなかったとしたら、などと考えると、間違いなくあっち側に行っていただろうという気がしてならない。

映画の感想かと思いつつ、最後には結局いつもの道重さゆみ話になってしまった。まあこれは仕方がない。今日の「ヤングタウン土曜日」ではどうやら「ロンドンハーツ」のことなんかも話しているみたいなので、とても気になる。「ロンドンハーツ」において自分の与えられた役割を真面目にやり切ってしまったが為に、番組が盛り上がり大絶賛の声がある一方で、あの出演場面イコール道重さゆみの本質と捉えてしまった一般視聴者からはかなりの批判の声が上がったようだ。Google検索ランキング1位とかこのブログも当日はアクセス数が通常の7倍とか、良くも悪くも道重さゆみが気になった人達が多かったようだ。道重さゆみ本来のコンプレックスとの葛藤や優しくて礼儀正しいところを知らずにあの番組だけを見れば、そんな反応も納得が出来る。というか、それ以外ありえないかもしれない。「一体どんな人なんだろう」と気になって調べた人が多かったのだろうが、中には「道重さん見直しました」というタイトルで、一昨年のDVDでの独白シーンがYouTubeに上がっていたのを見て、感動してマジ泣きしそうになったと書いている同世代の女性もいらっしゃった。これを読んでいてこっちが嬉しくて泣きそうになった。こういうのが少しずつでも増えて、もっと本当の魅力が少しでも伝わってくれればいいと思う。大丈夫です。

« 20's time 道重さゆみDVD。 | トップページ | 道重さゆみの「踊る!さんま御殿」出演に寄せて。 »

未分類」カテゴリの記事

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ