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2011年7月26日 (火)

宝の箱。

新山口で新幹線を降り、宇部線に乗り換えた。降りるべき駅の手前で、車窓に海が広がった。

小さな駅舎を出ると、とても静かな田舎の風景が広がっている。駅前の本屋で地図を買おうと思っていたのだが、店など一軒も見あたらない。ちょうど歩いてきた男子学生に尋ねたが、やはりこの辺りには無いということだった。

駅前の地図を頼りに、大きな通りへ出た。歩道橋の上で振り返ると、海の匂いがした。文字通り汗が吹き出すという感じの猛暑であり、私はごく一般的な会社員のコスプレをしていた。

ずっと歩いていくと、紳士服店の隣にセブンイレブンがあり、そこで地図とタオルと飲み物を買った。

公園には大きな湖があり、たくさんの白鳥が遊泳していた。夏休みの家族連れが、穏やかな時間を過ごしていた。

あれは2007年の8月であった。道重さゆみのラジオを聴くと、上京前、まだ実家で暮らしていた頃の話がよく出てきた。そのうち、それではそこは一体どのような場所なのだろうと興味が湧いてきた。オーサカキングで目撃した翌週、私はふたたび西行きの新幹線に乗っていた。

すでに夕方が近く、朝から何も食べていなかったため、空腹もピークに達しかけていた。公園にはもう少しいたい気もしたが、とりあえず食事をしなければと思い、イタリア風ファミリーレストランのようなところに入った。明太子スパゲティとグラスビールを注文した。

タクシーを呼んでもらい、それから辺りを見てまわった。運転手さんとの会話の中で、公園のことや地元名物のことなど、いろいろと知ることができた。

ふたたび駅まで戻り、それから地図で見たところ結構遠くにある大型商業施設まで歩くことにした。喉が乾いたので、空港の近くのローソンに入ると、九州にしか売っていないと思っていたブラックモンブランがあった。

空港の辺りで右折して、それからずっと真っ直ぐ行けば、目的地に着くはずである。やがて、バッハ書房という看板が見えてきた。それは当時、この商業施設の1階に入っていた書店の名前だが、数年後にTSUTAYAに変わった。

2階にはゲームセンターがあり、道重さゆみはかつてよくここでプリクラを撮っていたという噂がある。すぐ近くにはホームセンターがあり、小さな動物なども扱っていた。週末に家族で買物に来る、幸福な情景が目に浮んだ。

それから、泊まる場所を確保しようと、近くの駅から電車に乗ることにした。商業施設の外に出ると、遠くにコンビナートのようなものが見えて、夕暮れ時の景色の中で、それはSF映画の要塞か何かのように見えた。

岬の駅に向かう道は薄暗く、古い民家が立ち並んでいた。生活の灯りや夕食後の匂いが、子供時代を田舎で過ごした私の郷愁を誘った。実家にはもう10年以上も帰っていなかった。

ホテルにチェックインし、夜にまた出かけた。まだ夜8時ぐらいだというのに、あたりはすっかり暗い。空を見上げると、星がちゃんと光っていた。大きな通りに出て、歩き出した。ウォーキングの人や自転車が、時々通った。

ローソンで缶チューハイや煙草などを買った。この頃はまだ煙草を吸っていたのだ。ダジャレンボー将軍のコーナーで、道重さゆみが「煙草はやめてほしいですね、いろんな意味で」と言っていたこともあり、それから吸うのを止めたのだった。

小さな駅舎に戻ったが、新川行きの上り電車が来るまでにはまだ一時間以上あった。缶チューハイを飲み、煙草を吸いながら、iPodで重ピンク、こはっピンクこと道重さゆみと久住小春が歌う「宝の箱」という曲をリピート再生した。線路の向こう側の海の方で、小さな光が点いたり消えたりして、夏の虫が鳴き、空気は澄んでいて、空は濃い青色であった。

ホテルの向かいのセブンイレブンで明太子スパゲティや着替えのシャツなどを買って、部屋に戻った。持ってきた「17〜アロハロ道重さゆみDVD」をパソコンで再生しようとしたのだが、うまく読み込みができず、これは見ることができなかった。

翌日、午後から健康診断のようなものに行かなければならなかったため、朝8時ぐらいには東京へ向う新幹線に乗らなければならなかった。

早朝に起きて、宇部線に乗り、また小さな駅舎で降りた。よく晴れているが、まだそれほど暑くはなく、とても気持ちのよい朝だった。畑では、昔、田舎でよく見たような格好をしたお婆さんが、作業をしていた。

iPodはモーニング娘。の「歩いてる」を選曲した。道重さゆみは、この曲の歌詞が好きだとよく言っていたが、私にはどうも優等生っぽすぎて、面白味がないように思えていた。

しかし、その時、この曲の感じが、朝の田舎の風景にピッタリとハマっていて、その魅力が分かったような気がした。

特に、歌詞に出てくる「澄み切った空気」、「新鮮な贅沢」、「あたり前の自然」といった辺りは、まさにこのことをいっているのではないか、とすら思った。

翌年、私は13年ぶりに実家に帰り、家族と時間を共にした。

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